01|海へ続く石段
海へ続く石段。
形をよく見ると?
イギリスの北アイルランドにある海岸には、石の柱がぎっしり並ぶ場所があります。上から見ると六角形が多く、横から見ると巨大な石段のようです。ジャイアンツ・コーズウェーは「巨人の土手道」という意味です。
石は、溶岩が固まってできた玄武岩です。柱はおよそ4万本。背の低いものも高いものもありますが、一本ずつ別に運ばれたのではありません。大きな岩のかたまりが、縦の割れ目によって柱の集まりになったものです。

六角形ばかりではなく、大きさや形が違うものもあります。そろって見える石段は、どのようにできたのでしょう。
02|溶岩が柱になる
石を並べたのではなく、
岩に割れ目ができた。
およそ6000万年前、この地域では火山活動が起きました。熱い溶岩が谷へ流れ込み、厚い岩の層を作りました。固まった岩も、冷え続けると少し縮みます。
岩は周りとつながっているため、自由には縮めません。そのため力がかかり、割れ目ができます。割れ目がつながって多角形をつくり、冷えていく方向へ伸びると、囲まれた部分が長い柱になります。このような割れ方を「柱状節理」と呼びます。
もうちょっと詳しく|冷たい岩が割れたの?
冷えるといっても、常温まで下がってから割れるとは限りません。リバプール大学の研究チームは2018年、アイスランド産の岩を使った実験で、固まった後も高温の岩に割れ目ができる条件を調べました。現地の柱一本一本の温度を直接測った結果ではありません。
後の氷河や海の波は、上に重なっていた岩や弱い部分を削りました。こうして、地下にできた柱の断面と側面が海岸に現れました。
03|巨人の道という伝説
海へ向かう石段を、
巨人が作ったとしたら?
伝説では、アイルランドの巨人フィン・マックールが、スコットランドの巨人ベナンドナーと戦うため、海へ石の道を作ったとされます。別の伝説には、フィンが恋する人に会うために道を作った、という話もあります。
戦いの伝説には、相手の巨人が逃げるときに道を壊した、という続きがあります。海へ続くように見える石段を、巨人が作った道の残りとして語った話です。これは岩を調べて得られた結論ではなく、景色に結びついた伝説です。
04|どこまで分かった?
作り方は分かった。
一つひとつの形は同じではない。
溶岩が流れ、冷えて縮み、割れ目が柱になったことは地質学で説明できます。巨人が石を並べた証拠はありません。
ただし、自然の割れ目は定規で引いた線ではありません。冷える速さ、溶岩の厚さ、水分などの条件によって、柱の太さや辺の数は変わります。そのため、目の前の柱一本から、当時の条件をすべて読み取れるわけではありません。
もうちょっと詳しく|岩の年代の研究も進んでいる
2026年6月、英国地質調査所などは、北アイルランドの火山活動が起きた期間を約550万年間とする研究を紹介しました。以前の見積もりは約1350万年間でした。これは地域全体の活動の期間を見直したもので、目の前の石柱が冷えるまでに550万年かかった、という意味ではありません。
もう一度、写真の石段を見てみましょう。一本ずつ置かれたように見えた石は、つながっていた岩の一部です。柱と柱のすき間は、約6000万年前の岩が冷えていった過程を伝えています。
REFERENCE DESK
参考資料・関連リンク
この記録を支えた資料です。地質学で確認された形成過程と、地域に伝わる巨人伝説を分けて確認しています。資料の最終確認:2026年10月23日。
入口・書架の写真:Giant's Causeway (14).JPG/Chmee2(傾き補正:Reaperman)、CC BY 3.0。表示用に縮小・WebP変換し、画面に合わせてトリミングしています。本文写真:Giant’s Causeway Geology/Daniel Muhs・USGS(Public Domain)。原写真の前景をトリミングし、縮小・WebP変換しました。本文の模式図はNational Trust・BGS・リバプール大学の解説をもとに作成しています。
