ONLINE ARCHIVE第 一 書 庫
石の表面の粒と、ほぼ円形の輪郭が見えるディキス文化の石球。下に接地した影がある美術館の所蔵写真
メトロポリタン美術館所蔵の石球。出土した場所や古代の配置を写した写真ではありません。The Met / Public Domain
記録番号CRI–ARC–001
歴史の謎FILE 061

コスタリカの石球Diquís Stone Spheres

コスタリカの石球は、
何を伝えていた?

ボールのように丸いのに、石でできています。北アメリカと南アメリカをつなぐ中米の国、コスタリカ。南部のディキスという地域には、昔の人がつくった石の球が残っています。遊ぶためには大きすぎる球を、何のために置いたのでしょう。

▰ カテゴリ歴史の謎◎ 地域ディキス(コスタリカ)◆ キーワードコスタリカの石球 / ディキス / フィンカ6 / 古代の集落 / 石の彫刻▥ こわさこわさは低め

01|石を丸くする仕事

自然に転がって、
丸くなった石?

川には、水に流されて角が取れた石があります。でも、ディキスの石球は、人が形を整えたものです。小さな球もあれば、直径が2メートルを超える球もあります。大きなものは、立っている大人の背丈より高いほどです。

この地域で球が盛んにつくられたのは、西暦800〜1500年ごろ。ヨーロッパの人々がやって来る前から、ここには集落があり、人々が暮らしていました。石球も、その暮らしの中で生まれました。

使ったのは、石の道具です。石の表面をたたいて少しずつ削り、すり減らして形を整えました。入口の写真でも、球の輪郭と石の細かな粒が見えます。ただ、写真から、どの部分をどんな順番で削ったのかまで読み取れるわけではありません。

フィンカ6の屋外で石球の表面に近づいた写真。手前の石の細かな粒と丸い曲面が見え、奥には別の球と木々が写る
現地で石球に近づくと、丸い曲面にも石の細かな粒が見えます。2014年のフィンカ6。写真だけで加工の手順や古代の配置までは分かりません。François Bianco / CC BY-SA 2.0

人が手間をかけて丸くしたことは分かります。では、何のために、こんな大きな球をつくったのでしょう。今度は形から少し目を離し、置かれた場所を見てみましょう。

02|球だけでは読めない

草地の中にも、
手がかりがある。

木々に囲まれたフィンカ6の草地。手前から奥へ複数の石球が見え、奥には見学する人たちが立っている
木々に囲まれた草地で、石球を見る人たち。2012年のフィンカ6の様子です。今の展示風景であり、古代の配置を示す写真ではありません。Axxis10 / CC BY-SA 3.0

ディキスには、石球と建物の跡が一緒に残る遺跡があります。その一つが「フィンカ6」です。ここには、元の位置に残る5つの球があり、二つの並びをつくっています。

2007年のフィンカ6遺跡。草地の手前から奥へ、石球の上部が地面からのぞいている
2007年のフィンカ6。球の上部が草地からのぞいています。5つ全部や、古代の地表の高さを示す写真ではありません。Anne Egitto(Archaeochica)/ CC BY 3.0

写真では、小さな丸い石が地面に置かれているようにも見えます。けれども、この場所では長い間に土が積もり、球の上の部分だけが地表から出ています。見えている部分だけで、球全体の大きさは決められません。

研究者が調べるのは、丸さや大きさだけではありません。どの球がどこにあり、建物や通り道とどうつながるかも調べます。重要な建物へ上がる通路の、入口の両側に球が置かれた例もあります。

元の位置の球と展示区画を、現地博物館の案内で見る(スペイン語) ↗

03|誰に見せたかった?

大きな球が、
力を示したのかもしれない。

大きな石を丸く削り、集落に置くには、技術も人手も必要です。その球が重要な建物の近くにある。こうした手がかりから、集落を率いる人の力や、その場所の大切さを示したという解釈があります。

丸い球を見た人に、「ここには、これだけの仕事ができる人たちがいる」と感じさせたのかもしれません。ただし、これは当時の人の言葉として残っているものではなく、手がかりから考えられる意味の一つです。

球の形が似ていても、置かれた場所や時期が違えば、意味まで同じとは限りません。どの球にも一つの答えを当てはめることは、まだできないのです。

もうちょっと詳しく|太陽の動きと関係する?

球の並びが、太陽や星の動きと関係していたのではないかという考えもあります。フィンカ6では、日の出と球の並びを観察する催しが今も行われています。ただ、今の空で位置がそろうことと、古代の人がその目的で球を置いたことは別です。季節や農作業の時期を知るためだったのかなど、当時の使い道は慎重に考える必要があります。

04|場所ごと残す

球が残っても、
失われるものがある。

多くの石球は、農地の開発などで元の場所から動かされました。壊されたものもあります。球が残っていても、どの建物のそばに、何と一緒に置かれていたかが分からなくなると、使い道を考える大事な情報が失われます。

2020年のフィンカ6で撮影された、地面に並ぶ大きさの異なる複数の石球
2020年のフィンカ6で撮影された石球。古代の並び方を示す写真ではありません。現地には、元の位置の球とは別に、回収した球を展示する区画もあります。Diego Padilla Durán y Mariordo(Mario Roberto Durán Ortiz)/ CC BY-SA 4.0

フィンカ6など四つの遺跡は、2014年に世界遺産になりました。残そうとしているのは、丸い石だけではありません。球と建物と地面の関係も、古代の人々を知るための大切な記録です。

石球は、人が削ってつくったものです。その形には技術が残り、置かれた場所には意味を探る手がかりが残っています。入口の球をもう一度見ると、丸さの向こうに、「もとはどこにあったのだろう」という、もう一つの問いが見えてきます。

REFERENCE DESK

参考資料・関連リンク

画像クレジット

現地の接写:François Bianco「Diquis Stone spheres」(2014年11月23日)、元画像 ↗、CC BY-SA 2.0 ↗。縮小・WebP変換。全景を残し、変換画像も同じライセンスです。

木々と草地の写真:Axxis10「Parque de las Esferas de Costa Rica.JPG」(2012年10月18日)、元画像 ↗、CC BY-SA 3.0 ↗。WebP変換。全景を残し、変換画像も同じライセンスです。

入口・書架カード:The Metropolitan Museum of Art「Sphere」、作品番号2012.530.3。作品・Public Domain表示 ↗。縮小・WebP変換。出土地の配置を再現した写真ではありません。

草地の写真:Anne Egitto(Archaeochica)「Farm 6 archaeological site, Costa Rica.jpg」(2007年)、元画像 ↗、CC BY 3.0 ↗。縮小・WebP変換。全景を残して表示しています。

複数の球の写真:Diego Padilla Durán y Mariordo(Mario Roberto Durán Ortiz)「Diquis Stone Spheres in situ Finca 6 CR 12 2020.jpg」(2020年12月29日)、元画像 ↗、CC BY-SA 4.0 ↗。縮小・WebP変換。改変画像も同じライセンスです。ファイル名の「in situ」を、元の5球の配置だという根拠にはしていません。