ONLINE ARCHIVE第 一 書 庫
アフ・トンガリキに立つ6体のモアイ。長い顔と大きな胴体、台座の上の足元が見える
ラパ・ヌイのアフ・トンガリキ。写真:Rivi / CC BY-SA 3.0
記録番号CHL–ARC–001
歴史の謎FILE 026

モアイMoai / Rapa Nui

石の巨人の運び方

大きな顔の下には、重い石の体。でも、足はありません。ラパ・ヌイの人々は、こんな像をどう運んだのでしょう。人が縄なわでゆらして「歩かせる」実験から、昔の工夫を追います。

▰ カテゴリ歴史の謎◎ 地域ラパ・ヌイ(チリ)◆ キーワードモアイ / ラパ・ヌイ / 石像の運搬▥ こわさこわさは低め

01|石から生まれた像

この体を、どこから運んだ?

写真のモアイを、顔から足元へと見てみてください。長い鼻の下には口があり、その下に胴体が続きます。まっすぐ立つ姿は、石でできた人のようです。

ここは、太平洋に浮かぶチリの島、ラパ・ヌイ。イースター島とも呼ばれます。モアイは、この島の人々が作った石像せきぞうです。昔の家族や一族の人々である祖先そせんを、大切にするための像と考えられています。

多くのモアイが作られたのは、ラノ・ララクという場所でした。岩から石を切り出す「石切り場」です。ここには、岩に残った彫り跡や、作りかけの像があります。

ラノ・ララクの草地と岩の斜面に立つモアイ。地面から出た長い顔と胴体が見える
石切り場のあるラノ・ララクに残るモアイ。現在の遺跡の写真です。写真:Aurbina / Public Domain

ところが、完成した像の多くは、石切り場とは別の場所にある台座だいざに立っています。どこかで岩から切り離し、重い体を運ぶ必要がありました。

車もクレーンもない時代に、どう動かしたのか。「地面に寝かせて引いたのでは」と考える人もいれば、「立てたまま運んだのでは」と考える人もいます。そこで研究者は、実際に像を動かしてみました。

02|立ったまま動く

足がなくても、ゆらせば進める。

カール・リポ、テリー・ハント、セルヒオ・ラプ・ハオアらは、本物の形をもとに、実験用の複製ふくせいを作りました。重さは4.35トンです。人が抱えて持ち上げるような大きさではありません。

この実験で動かした規模
像の重さ
4.35トン
動かした人
18人
進んだ距離
100m
かかった時間
40分

本物のモアイすべての重さや、昔の作業人数を表す数字ではありません。

使ったのは三本の縄なわ。左右に延びる縄を交互に引き、後ろからも支えます。像は右へ、左へとゆれながら、少しずつ前へ進みました。

足のかわりに、底の左右を使う

ゆらす。支える。少し進む。

立てたモアイを動かす三本の縄正面を向く像の左右へ金色の縄が延び、後ろへ緑の縄が延びます。左右の縄で交互に揺らし、後ろの縄で前への倒れ過ぎを抑える関係を示す説明図です。

左右の縄なわ交互に引いて、像をゆらす。

後ろの縄なわ前へ倒れすぎないように支える。

  1. 01片側の底で支える
  2. 02反対の底へ移る
  3. 03ゆらしながら進む
三本の縄の役割と、底面を交互に支える動きを示した説明図です。像の形・傾かたむき・縄の長さ・人の位置は実測図ではありません。後ろの縄は像の向こう側へ延びています。重い物でまねをせず、研究者の実験映像で動きを確かめてください。

体を片側へ傾かたむけると、底の片側で体を支えます。次に反対側へゆらすと、支える側も移ります。この動きを繰り返すと、像は立ったまま進めるのです。

「歩く」といっても、石が自分で動くわけではありません。人が縄を使い、像の形と重さをうまく働かせる運び方です。後ろの縄も、前へ倒れすぎないようにする大事な役目を持っています。

研究者の実験映像・写真を見る ↗大学の元ページが開きます

03|道に残った手がかり

「できる」と、「昔もそうした」は違う。

実験で像が進んだ。これで、昔の運び方も決まったのでしょうか。まだ、もう一つ確かめることがあります。動かせる方法が見つかっても、それが昔に使われた方法とは限らないからです。

研究者は、島の道沿いに残った像も調べました。その中には、底が幅広く、少し前へ傾かたむく形の像があります。こうした特徴は、立ててゆらす運び方と合っています。

さらに、像がどこに残り、どう壊れているかを見ます。途中で倒れ、運べなくなったと考えると説明しやすい跡があるのです。2025年の研究では、立体モデルや道の形も使い、この運び方と遺跡の特徴を照らし合わせました。

実験で確かめる

その方法で動かせる?

本物の形をもとにした複製で、動きや支え方を試す。

遺跡で照らし合わせる

昔の跡と合っている?

像の形、道、壊れ方、残った場所を調べる。

この二つが合うほど、「昔もこう運んだのでは」という説明は有力になります。ただし、何百年も前の作業を、最初から最後まで見られるわけではありません。

別の研究者、ジョー・アン・ヴァン・ティルバーグらは、寝かせた複製像を木のそりで動かす実験にも成功しています。条件の違う実験を、人数の少なさだけで比べることはできません。大事なのは、どの方法が本物の像や道の特徴まで説明できるかです。

04|どこまで分かった?

像だけでなく、人の工夫が見えてくる。

モアイを立てたままゆらして運ぶ方法は、複製像で実現できました。本物の像の形や、道沿いの跡にも合うため、昔の運び方を説明する有力な考えです。

一方、一体ずつの像をどんな縄で、何人が、どのように最後まで運んだのか。その作業の細部は、すべて分かったわけではありません。

もうちょっと詳しく:海から運べば?

陸の上が大変なら、いかだに載せて運べないでしょうか。2026年の研究では、ヤシの丸太が水に浮く力と、重い像を支えられるかが検討されました。研究者は、調べたヤシ材の性質では、重い像をいかだで運ぶのは難しいと結論づけています。ただし、別の案が難しいことだけで、歩かせる方法が昔に使われた証明にはなりません。

次にモアイの写真を見るときは、顔だけでなく、足元の形にも目を向けてみてください。動かない石の体から、重さを使いこなした人々の工夫を考えることができます。

REFERENCE DESK

参考資料・関連リンク

この記録を支えた資料です。実験で確かめられたことと、遺跡から考えられることを分けて確認しています。資料の最終確認:2026年10月20日。

画像クレジット

入口・書架の写真:Rivi「Ahu Tongariki.jpg」(2006年3月29日)。CC BY-SA 3.0。表示に合わせて縮小・トリミングしています。改変部分も同じライセンスです。

石切り場の写真:Aurbina「Moai Rano raraku.jpg」(2004年1月)。作者がPublic Domainとして公開。表示に合わせて縮小しています。写真は昔の運搬場面を記録したものではありません。

三本の縄と動きの図:本文資料をもとに作成。特定の像の寸法や、古代の作業風景を復元した実測図ではありません。