ONLINE ARCHIVE第 一 書 庫
雷雨の空の下、草地の近くに丸い光が浮かぶ想像の場面。遠くには線状の稲光が見える
※AI生成によるイメージ。目撃される姿の想像で、観測写真ではありません。
記録番号EAR–ATM–002
不思議な場所・現象FILE 053

球電Ball lightning

雷雨の光の玉は、
何が光っている?

雷の光といえば、空を走るギザギザの線。でも、雷雨のときに「丸い光が、空中にしばらく残った」という報告もあります。球電きゅうでん、または球雷きゅうらいと呼ばれる現象です。短い時間で消えてしまうため、調べるのは簡単ではありません。目撃談だけでなく、カメラに残った光と、その成分を調べた研究から、何が分かるのか追ってみましょう。

▰ カテゴリ不思議な場所・現象◎ 地域各地の雷雨/中国・米国などの観測◆ キーワード球電 / 球雷 / ボールライトニング / Ball lightning / 雷雨の光の玉▥ こわさ▲ ちょっとこわい

01|まず、何が違うのか

ぱっと光る稲光とは違って、
光の玉が残ったという。

同じ草地を窓から見た想像の3場面。左は落雷、中央は稲光が消えた後の光の玉、右は少し動いて残る光の玉
① 雷が光る② 稲光が消える③ 丸い光は残る
目撃される特徴を想像した連続場面。特定の目撃の復元ではなく、光の大きさ・移動距離・時間は測定値を示していません。

雷は、空気の中を強い電気が流れて光る現象です。線状の稲光いなびかりはぱっと走ります。一方、球電の報告には、丸い光が数秒ほど残り、動いたというものがあります。

日本にも目撃報告があります。2007年の日本気象学会の雑誌には、札幌で白い光の玉を約1秒見たという報告が載りました。ただし、載っている図の光球は、目撃者の記憶から描いたものです。

「見た」という話は大切な入口です。でも、光の正体を調べるには、後から見直せる記録も欲しくなります。

02|短い光を、装置がとらえた

虹色の帯は、
空の虹ではありません。

研究者が公開した分光装置の実画像。左端に白い発光が小さく写り、装置で分けられた光が中央に色の帯となっている
左端の白い光 撮影された発光中央の色の帯 装置が分けた光
研究者が公開した実観測資料。Yuan・An/Zenodo、CC BY 4.0。色の帯には、落雷の光と球電として報告された光の情報が写っています。左端の小さな光にも注目してください。

2012年7月、中国の青海チンハイで、研究者が普通の雷を調べていました。約900メートル離れた場所に雷が落ち、その後、光の玉が現れました。カメラと、光を細かく分ける装置が記録を残しました。

研究者はこれを球電として、2014年に報告しました。写真の虹色は、そこに虹が出たのではありません。光を分けて写したものです。元の映像と、観測の説明を見る ↗

姿だけでなく、光の中身も調べられる。ここから、意外な手がかりが見つかりました。

03|空の光から、地面の手がかり

光の中に、
土にもある成分が見つかった。

考えられている仮説:土の小さな粒が光る?

雷が落ちた地面から小さな粒が浮かび、空気と反応して光るという仮説を想像した画像。土の粒と発光を見やすく強調している

測定で見つかった光の成分
ケイ素・鉄・カルシウム — 土にも含まれる

仮説の説明イメージです。粒子と発光を見やすく強調しており、実際の粒の大きさや反応の姿を再現したものではありません。土から光の玉ができるしくみが確定した、という意味ではありません。

物質によって、出す光の特徴が違います。装置で光を細かく分け、どんな光が強いか調べると、何が光っているのかを考えられます。この調べ方を分光ぶんこうといいます。

記録には、ケイ素、鉄、カルシウムの光が見つかりました。これらは土にも含まれる成分です。雷が地面に落ち、土から生まれた小さな粒が空気と反応して光る、という仮説を考える手がかりになりました。

けれど、成分が分かることと、光がどう生まれて続くかを説明できることは別です。2025年の研究では、光の成分から放射の強さを分析し、周囲の電気が供給されるしくみも提案されました。これも、一つの観測を説明しようとする研究です。

すべての球電が、同じしくみで光ると決まったわけではありません。では、別の場所の光の玉も、写真さえあれば正体を確かめられるでしょうか。

04|写真があっても、確かめることがある

大きく写った光が、
大きな玉とは限らない。

説明用に想像した撮影場面。左のカメラが机の小さな強い光を撮り、右の画面には広がった丸い白い像が映る
机の上:小さな光源カメラが向いている光画面:広がった光の像強すぎる光の写り方
カメラの写り方を説明する想像の場面。実際の検証実験の写真ではなく、画面の拡大率や光の大きさを測れる比較ではありません。2025年の研究では、似たカメラで光が広がる写り方を確かめました。

2023年、米国モンタナ州の防犯カメラに、動く二つの光が写りました。2025年に発表された研究では、映像と周囲の状況を詳しく調べました。

近くの電線で起きた放電から飛び出した、燃える小さなかけらだった可能性も残りました。さらに、似たカメラを使う実験で、強い光が大きく広がって写ることを確かめました。実際の映像のコマと、検証を見る ↗

光が写っているのは確かでも、それを球電と呼んでよいかは別の問いです。先ほどの中国の観測についても、電線の放電という別の解釈が指摘されています。

見慣れない光を、すぐに不思議な現象と決めない。でも、分からないからといって、調べるのをやめない。光と、その周りにあったものを合わせて確かめるのです。

05|光が消えた後にも、手がかりはある

光の玉だけでなく、
その場所も調べる。

中国の観測周辺を日中に写した資料。丘の上に鉄塔と電線があり、左端の黄色い印が発光の位置を示す
中国の観測周辺の実写真。Yuan・An/Zenodo、CC BY 4.0。黄色い点と「BL location」は観測された発光の位置を示す印で、写真に球電が写っているのではありません。「Tower 4」は鉄塔です。

日中の写真では、丘や電線が見えます。夜の光だけを切り取ったときには、分からなかった周囲の様子です。どこで光ったのか、電線は近くにあったか、カメラはどう写すか。それらも原因を考える手がかりになります。

何が起きた?
雷雨のとき、丸い光が残ったという報告があり、映像や光の成分を測った例もあります。

何が分かっている?
中国の観測では土にもある成分の光が記録されました。似た光の映像には、電線の火花やカメラの写り方も関わり得ます。

何がまだ分からない?
光を保つエネルギーがどう供給されるのか。各地の報告はすべて同じ現象なのか。原因を一つに決める説明は、まだありません。

短い光が残した記録は、「見えた」で終わらず、「何が光ったのか」を考える入口になりました。次の確かな記録は、どの説明に近づくのでしょう。

雷の音が聞こえたら、光を探しに出ず、頑丈な建物など安全な場所へ避難してください。

REFERENCE DESK

参考資料・関連リンク

目撃報告、実際の光の測定、原因の仮説を分けて確認しました。最新資料の確認:2026年10月11日。

現象の説明世界気象機関|球電cloudatlas.wmo.int雷の前後に報告される、球状の発光について。個々の目撃の原因まで確定する資料ではありません。日本の目撃報告藤吉康志・南雲信宏|球雷の目撃報告www.metsoc.jp日本気象学会『天気』、2007年。2006年の札幌の報告。掲載図の光球は記憶をもとに描いたもので、光球自体の実写真ではありません。光の測定Cen・Yuan・Xue|球電の光とスペクトルの観測doi.org2014年の原論文。中国で観測された発光を、球電として報告。公開要旨を確認しました。測定の読み方米国物理学会|球電の光を初めて分けて調べるphysics.aps.org2014年。観測映像と光の成分、土から生じる微粒子という仮説、観測だけでは決まらない点。近年の分析Yuanほか|光の成分から放射の強さを調べるdoi.org2025年6月。発光の分析と、電気が供給されるしくみの提案。公開要旨・平易な要約を確認。全目撃を説明した結論ではありません。公開観測資料Yuan・An|研究に使われた画像とデータzenodo.org2025年に公開。本文の分光像と、観測された周辺の写真。CC BY 4.0。映像の検証Stephan・Sonnenfeld・Bertoloni|球電候補の映像を検討doi.org2025年6月。2023年の米国の映像を分析。電線からの燃える小片という説明が残り、カメラの写り方も実験で調べています。2026年の研究紹介Texas State University|光の玉の映像を見分ける難しさnews.txst.edu2026年2月。上記の映像研究を紹介。記事では紹介文より原論文の慎重な結論を優先しています。雷から身を守る気象庁|雷から身を守るにはwww.jma.go.jp雷が近づいたら、速やかに建物などの安全な場所へ避難します。
画像クレジット

分光像・日中の観測周辺:Ping Yuan・Tingting An/Zenodo(2025)↗、CC BY 4.0 ↗。分光像は公開JPEGを無加工掲載。観測周辺は公開TIFFをWebPへ変換。位置を示す印は元資料にある注記です。

記事入口の光の玉:AI生成による想像画像。実際の観測記録や、特定の目撃場面の精密な復元ではありません。本文01の連続場面、03の土の粒子の仮説、04の撮影場面もAI生成の説明イメージです。公開実資料とは区別し、測定値や実験装置の精密な復元を示すものではありません。