ONLINE ARCHIVE第 一 書 庫
緑がかった肌の二人の子どもに、収穫畑で村人が出会う場面を想像した画像
※AI生成によるイメージ。年代記をもとに想像した場面です。
記録番号ENG–LEG–001
都市伝説・伝承FILE 020

ウールピットの緑の子どもTHE GREEN CHILDREN OF WOOLPIT

800年前の記録に
現れた
「緑色の子ども」
は、どこから来た?

畑で見つかったのは、緑色の肌をした男の子と女の子。言葉は通じず、出された食べ物も口にしません。ところが、豆を見つけると反応した——。中世イングランドの二つの年代記に残る、不思議な二人の話です。何が書かれ、何が分からないままなのでしょうか。

▰ カテゴリ都市伝説・伝承◎ 地域イングランド東部・サフォーク◆ キーワード緑の子ども / ウールピット / 中世伝承▥ こわさこわさは低め

THE STORY AS RECORDED

豆なら、食べた。

舞台は、イングランド東部のサフォークにあるウールピットという村。12世紀の収穫の季節に、緑色の肌をした二人の子どもが見つかった、と古い記録は伝えます。

二人は、村人に分からない言葉を話し、服も見慣れないものでした。食べ物を出されても食べません。ところが、畑から豆が運ばれてくると、二人はそれをつかんだそうです。

村人が開いたさやから豆を差し出し、緑がかった肌の二人の子どもが手を伸ばす想像図
言葉は通じなくても、豆には反応した。ウィリアムの記録では、二人は最初、茎の中に豆を探しました。村人がさやから出して見せると、ようやく食べたといいます。※AI生成によるイメージ。実際の顔、服装、建物の様子は分かっていません。

その後、女の子はほかの食べ物も食べるようになり、肌の緑色は薄れたとされています。男の子は亡くなりましたが、女の子は生き残り、土地の言葉を覚えたそうです。

TWO CHRONICLES

残ったのは、二つの文章。

この話を収めたのは「年代記」です。昔の出来事をまとめた記録で、戦いや王の話に交じって、不思議な出来事も書かれました。

一つは、12世紀末にウィリアム・オブ・ニューバーグが書いた年代記。彼は初め、この話を信じかねたものの、多くの人から聞いて書き残した、と説明しています。

もう一つは、13世紀初めのラルフ・オブ・コッゲシャルの年代記です。こちらは、子どもたちを保護したという騎士リチャード・ド・カルネと、その家の人々を情報源に挙げています。

ただし、二人とも、畑での発見を自分で見たと書いているわけではありません。文章が二つあっても、別々の目撃者が同じ出来事を確かめた、とは限らないのです。

READ THE DIFFERENCE

同じ話。でも、違う道。

二つの文章には、緑の肌や豆といった共通点があります。けれど、二人の故郷を探そうとすると、気になる違いが出てきます。

二つの年代記が伝える、故郷の話
比べる点ウィリアムラルフ
村へ来た道鐘を聞き、気づくと収穫中の畑にいた洞窟を通って外へ出た
故郷を話す人二人の子ども生き残った女の子
故郷の名聖マルティンの国同じ名前は記されていない
原文の長い説明から、この三点を抜き出して要約しています。二つの記録をつないで、一つの確かな道順にすることはできません。William第27章、Madej(2020)の比較に基づく整理です。

ウィリアムは、話を聞いた人々の名前を記していません。二人の書き手が、途中で同じ人物や同じ村の話を聞いた可能性もあります。話が伝わる途中で細部が変わったのか、もともと違う説明だったのかは、判断できません。

共通点があるからといって全部が事実になるわけでも、違いがあるから全部が作り話になるわけでもありません。今ある文章からは、そこまで決められないのです。

ウィリアムの年代記・第27章を読む

POSSIBLE EXPLANATIONS

別の土地の子どもだった?

知らない言葉を話し、見慣れない服を着ていたのなら、二人は遠くから来た子どもだったのでしょうか。移住してきた人々の子どもだと考える説もあります。

また、肌の色の話を、食生活や体調から説明しようとした人もいます。しかし、診察の記録も、肌の色を確かめた資料もありません。短い昔の文章だけで病名を決めることはできません。

THE HOMELAND IN THE TALE

故郷は、薄暗い国。

ウィリアムの文章で二人が語ったという故郷には、朝夕のような薄明かりがあり、川の向こうには明るい土地が見えたそうです。「聖マルティンの国」という名も出てきます。聖マルティンは、キリスト教で聖人と呼ばれる人物の名前です。

この不思議な故郷は、妖精の国や地下世界の話と結びつけて読まれてきました。後の時代には、月や異星人の物語にも取り込まれます。でも、中世の年代記が宇宙人の訪問を記録した、と確かめられたわけではありません。

もうちょっと詳しく:いまも続く読み直し

2025年のソニア・オーヴァーオールの論考は、近年の短編がこの話をどう書き直したかを扱っています。知らない土地で生きることや、自分と違う存在をどう描くかという読み方です。古い記録の子どもの出身地が、新しく突き止められた研究ではありません。

大学公式の研究紹介を読む

A STORY THE VILLAGE REMEMBERS

村には、二人の姿が残る。

現代のウールピットでは、村の看板に二人の子どもが描かれています。村の公式サイトも、この看板と緑の子どもの伝承を紹介しています。

ウールピットの村名が入った看板。左側に手をつなぐ緑色の二人の子ども、右側にオオカミの姿がある
これは、いまに伝わる物語の姿です。中世に作られた子どもの肖像ではなく、現代の村の看板です。二人が本当にこの姿でいたことを証明するものではありません。写真:Rod Bacon / Geograph(2009年2月8日)、CC BY-SA 2.0。元写真全体を改変せず掲載。

CURRENT STATUS

残った記録と、消えない謎。

確認済み

二つの年代記がある

中世の書き手が、よく似た子どもの話を記録しています。書かれた内容には違いもあります。

記録が伝えること

緑の肌、豆、薄暗い故郷

二人の外見や言葉は、年代記が伝える話です。現代に同じ出来事を観察した証拠ではありません。

未解明

実際の二人と故郷

二人が実在したか、どこから来たか、なぜ緑色と記されたかは確定していません。現実説も異世界説も、答えが出たわけではありません。

AN UNFINISHED JOURNEY

二人の故郷は、今も謎。

豆を見つけたとき、二人は何を思ったのでしょう。故郷で知っていた食べ物だったのか。残る文章には、その問いに答えてくれる二人自身の記録はありません。

REFERENCE DESK

参考資料・関連リンク

根拠の確認日:2026年10月17日。年代記の存在、そこに書かれた話、後世の説明を分けています。古い文章や現在の看板から、実際の二人の姿や故郷まで確定したとは扱いません。

画像クレジット

Hero・豆の場面:OpenAIの画像生成機能によるイメージ。年代記をもとに想像した現代の再現で、実写・中世の絵ではありません。顔、服装、建物の詳細は不明です。

村の看板:Rod Bacon / Geograph、CC BY-SA 2.0。撮影日・出典・ライセンスは写真の直下。年代記の比較表は、本文資料に基づく要約です。