ONLINE ARCHIVE第 一 書 庫
カッシーニが近赤外線でとらえた土星の白黒画像。北極の六角形と中央の渦、その後ろに広がる輪が見える
記録番号SAT–ATM–001
不思議な場所・現象FILE 058

土星の六角形Saturn’s Hexagon

土星の雲は、
なぜ六角形?

大きな輪を持つ惑星、土星。その北極を上から見ると、雲の中に六角形の模様が見えます。雲なら、風に流されて形が変わりそうです。ところが、この模様は何十年も観測されてきました。角のある雲は、何でできているのでしょう。

▰ カテゴリ不思議な場所・現象◎ 地域土星の北極付近◆ キーワード土星 / 六角形 / 雲 / カッシーニ / ジェット気流▥ こわさこわさは低め

01|北極にあるのは何?

固い六角形ではなく、
速い空気の流れ。

土星を斜め上から見た白黒の探査画像。丸い惑星の北極付近に、角のある雲の模様が見える
2017年6月28日の北極付近。近赤外線でとらえた白黒画像です。NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute

土星は、地球のような固い地面が表面にある惑星ではありません。外側は、気体と雲に包まれています。写真の六角形も、地面の模様や建物ではありません。

その正体は、北極のまわりを巡る、細長く速い空気の流れです。このような流れを「ジェット気流」といいます。土星の六角形では、風が時速約320kmで吹いています。模様を端から反対側まで横切る距離は約3万km。惑星の空にできた、とても大きな形なのです。

1980年代初めの探査機たんさきボイジャーのデータに写り、その後のカッシーニでも確かめられました。何十年も同じ雲が止まっているのではなく、空気が流れる中で六角形の模様が続いているのです。

では、動き続ける空気に、どうして角ができるのでしょう。

02|流れにも角ができる?

通り道そのものが、
波打っているとしたら。

空気が輪に沿って進んでも、その通り道が、きれいな円になるとは限りません。流れが大きく曲がりくねると、輪にも、ふくらむ場所とへこむ場所ができます。

円に沿う流れ

空気が進む通り道を、一本の線で表しています。

波打つ流れ

通り道そのものが曲がると、輪の形も変わります。

矢印は流れる向き。本文資料をもとに、形の違いを示した模式図です。実測図や、土星内部の再現ではありません。

土星の六角形も、こうした大きな波として研究されています。空気は流れていても、波の形がほぼ同じ場所に保たれることがあります。「風が吹くこと」と「模様が移動すること」は、同じではないのです。

ただし、これで全部が解けたわけではありません。なぜ曲がる場所が六つになるのか。その形を、なぜ長く保てるのか。風の速さや周囲の渦うず、深いところの空気の動きとの関係が調べられています。

入口の写真でもう一つ注目したいのは、中心の丸い渦です。これは北極にある別の大きな嵐。六角形は、その外側を囲む流れの模様です。丸い中心と六角の外側を分けて見ると、写真の読み方が変わります。

もうちょっと詳しく:計算で似た形ができたら?

2020年の研究では、惑星の深い層で温められた気体が上下に動く「対流」を、回転する球の中で計算しました。そこで生まれた大きな渦が流れを押し曲げ、多角形になる仕組みが示されました。

これは、考えられる仕組みを確かめるモデルです。似た形ができても、土星の内部で同じことが起きていると、それだけで証明されたわけではありません。

研究論文の著者版を読む(英語) ↗

03|形は残り、色は変わる

同じ北極を、
数年後に見てみると。

形が続くからといって、北極の空が変わらないわけではありません。次の二枚は、肉眼で見る色に近づけた「自然色」の画像です。上と下で、何が違って見えるでしょう。

上は2012年11月の青みがかった土星の北極、下は2016年9月の金色がかった北極。両方の画像を上下に並べた比較
上:2012年11月。下:2016年9月。自然色による比較です。NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute/Hampton University

青みがかった空が、金色に近い色へ変わっています。季節が進んで日光が当たり続けると、空気の中の細かな粒、もやが増えます。この変化が、色の違いに関わると考えられています。空気の巡り方の変化なども、候補に挙げられています。

入口の写真は、近赤外線でとらえた白黒画像です。雲の形を見る入口の写真と、色の変化を見る自然色の比較画像。それぞれに目を向けると、土星の空を違う角度から知ることができます。

六角形という大きな模様が続く一方で、その中の空は変化しています。写真を見比べることで、形だけでは気づかない変化も追えるのです。

04|まだ知りたいこと

見つかった形の、
その先へ。

分かったのは、六角形が空気の流れの模様であることです。流れが波打つ仕組みは研究されていますが、六つの角が選ばれ、長く続く条件には、まだ調べる余地があります。

最初の六角形を、もう一度思い出してみてください。止まった図形に見えた角の内側で、雲は流れています。遠い惑星の空には、写真一枚では見きれない動きが続いているのです。

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参考資料・関連リンク

探査で分かったことNASA/JPL|土星の六角形をとらえたカッシーニwww.jpl.nasa.gov2013年12月4日。六角形の大きさ、風速、雲の動きについて。英語。六角形の実画像NASA/JPL|In Full View: Saturn’s Streaming Hexagonwww.jpl.nasa.govPIA17652。2012年12月の観測を使った、北極を上から見る画像。色を割り当てる処理についての解説。英語。北極の位置と姿NASA/JPL|Circles and Hexagonswww.jpl.nasa.govPIA21348。2017年6月28日に、斜めからとらえた北極付近の雲。近赤外線の観測。英語。色の変化NASA/JPL|Changing Colors in Saturn’s Northwww.jpl.nasa.govPIA21049。2012年と2016年の自然色画像の比較。色が変わった理由として考えられること。英語。仕組みの研究Yadav・Bloxham(2020)|深い層の対流と土星の六角形arxiv.orgPNAS誌掲載論文の著者版。大気の流れが多角形になる数値モデルと、先行する研究を紹介。英語。2026年の発見NASA|ハッブルがとらえた土星南極の十角形science.nasa.gov2026年9月2日発表。北極の六角形とは別に、南極で確認された大気の波について。英語。土星の基本情報NASA|Saturn Factsscience.nasa.gov輪を持つ惑星・土星の構造と大気について。英語。画像の利用条件JPL Image Use Policywww.jpl.nasa.gov画像のクレジット、利用上の例外、NASA等の推薦と誤認させないための条件。英語。
画像クレジット

入口・書架:Vortex and Rings(PIA18274、近赤外線による白黒画像)、NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute。出典:NASA/JPL公式画像。原画像を余白の追加や切り抜きなしでWebPへ変換しています。北極の白黒画像:PIA21348、NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute。色の比較:PIA21049、NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute/Hampton University。各公式画像をWebPへ変換しています。流れの模式図は本文資料をもとに作成。AI生成画像は使用していません。NASA等による推薦や監修を示すものではありません。