ONLINE ARCHIVE第 一 書 庫
雪山を歩く白い毛の雪男を想像した姿。実在する動物の写真ではない
雪男の姿を想像したイメージ。※AI生成。毛色や姿が確認されたわけではありません。
記録番号HML–UMA–001
未確認生物FILE 051

イエティ(雪男)Yeti

雪男の手がかりは、
なぜクマにつながった?

高い山々が連なるヒマラヤには、人のように歩く毛深い「雪男」の話があります。名前はイエティ。足跡や毛が、その手がかりだとされてきました。ところが、毛などを調べると、クマのDNAが見つかったのです。雪男の謎は、これで解けたのでしょうか。冒頭の雪男は、AI生成で描いた想像の姿です。

▰ カテゴリ未確認生物◎ 地域ヒマラヤ・チベット周辺◆ キーワードイエティ / 雪男 / ヒマラヤ / DNA調査▥ こわさこわさは低め

01|姿が見えなくても、跡は残る

雪に残った足跡。
その先に、だれがいた?

昔の登山者が、雪に残った幅広い跡を調べる想像の場面。跡をつけた生き物の姿は見えない
雪上の跡を調べる場面の想像。※AI生成。1951年の実写真の復元ではありません。

1951年、登山家のエリック・シプトンたちは、ヒマラヤの雪の上に不思議な足跡を見つけました。シプトンは、登山用の道具や靴をそばに置いて写真に残しました。

足跡が写真に残ったことと、それを雪男がつけたことは、別の話です。写真には、歩いた主の姿までは写っていません。同行者の記録と実際の写真を見る(PDF) ↗

姿を確かめられないなら、別の手がかりはあるでしょうか。「イエティのもの」として保存されてきた毛などに、研究者が目を向けました。

02|山の話を、実物から確かめる

小さな毛にも、
持ち主の手がかりがある。

手袋をした手が少量の動物の毛を扱い、小さな試験用の容器が並ぶ実験室の想像の場面
毛などを扱う実験室のイメージ。※AI生成。実際の研究者や調査資料を写したものではありません。

生き物の体には、体を作るための情報を持つDNAがあります。毛などから取り出したDNAを、どの動物のものか分かっているDNAと比べると、その資料の由来を調べられます。

  1. 資料を集める毛や皮など、残された実物
  2. DNAを調べる体の中にある情報を読む
  3. 動物と比べるどの動物に当てはまるか

2017年、バッファロー大学のシャーロット・リンドクヴィストらは、博物館や個人の収集品しゅうしゅうひんから、イエティ由来とされた9点の資料を調べました。毛だけでなく、骨や歯、皮なども含まれていました。その結果はどうだったのでしょう。

03|名前よりも、資料の中身を見る

9点のうち、8点はクマ。
残る1点はイヌだった。

2017年のDNA調査「イエティ由来」とされた、9点の資料
チベットヒグマ6点
ヒマラヤヒグマ1点
ツキノワグマの仲間1点
イヌ1点
クマ:8点イヌ:1点
丸1つが資料1点を表します。動物の頭数ではありません。調べた9点の結果であり、すべての目撃談の割合ではありません。バッファロー大学の発表をもとに作成。

「イエティのもの」と呼ばれていても、DNAが示したのは、すでに知られている動物でした。調べた9点から、未知の雪男のDNAが見つかったわけではありません。

これは大きな手がかりです。けれども、分かったのは調べた資料の正体です。1951年の足跡や、すべての目撃談の主まで、この結果だけで決めることはできません。

では、なぜ手がかりがクマにつながるのでしょう。雪男の話が語られる山には、実際にクマが暮らしているのです。

04|伝説から、生きている山へ

その山には、
本物のクマが暮らしている。

インドのKugti Wildlife Sanctuaryの山の斜面にいる、ヒマラヤヒグマの親子の実写真
ヒマラヤヒグマの親子。インドで2017年に撮影された実写真です。DNA調査に使った資料の持ち主を写した写真ではありません。写真:Niazulkhan。

研究者は、地元のクマが雪男の伝承の背景に関わっている可能性が高いと考えています。ただし、長く語られてきた話のすべてを、一種類のクマに置き換えられるわけではありません。

調査は、クマ自身の歴史にもつながりました。DNAを比べると、ヒマラヤヒグマの祖先は、ほかのヒグマの仲間から早くに枝分かれしたと考えられます。山に隔てられて暮らすクマたちにも、長い歴史があったのです。

伝説の手がかりを追ううちに、本物の動物についても新しく分かることがありました。いま、山の観察はどこまで進んでいるのでしょう。

05|残る謎を、次の記録へ

夜のカメラがとらえた、
山を歩くクマ。

2024年6月、インドのラダックのカメラが記録したチベットヒグマ。実際の夜間撮影4場面
2024年6月22〜23日のカメラ記録。2025年に報告されました。写っているのはチベットヒグマで、イエティではありません。出典:Kumarほか、Oryx。

インド北部のラダックでは、見慣れない大きな動物の話を受け、観察用のカメラが置かれました。8台のうち3台が1頭のクマを記録。研究者は、毛色や首のまわりの白い模様などから、チベットヒグマと判断しました。

この記録も、昔の雪男の目撃を全部解決したものではありません。けれど、山のどこに、どんな動物が暮らすのかを確かめる記録は、今も増えています。

雪男の手がかりを調べたら、クマにつながった。まだ主の分からない足跡や話も残っています。想像の姿を楽しみながら、確かめられた実物と記録を追う。その先には、伝説の山で生きる動物たちの、別のふしぎが待っています。

REFERENCE DESK

参考資料・関連リンク

伝承、資料のDNA、実際の動物の観測を分けて確認しました。資料の最終確認:2026年10月11日。

画像クレジット

ヒマラヤヒグマの写真:Niazulkhan / Wikimedia Commons ↗、CC BY 4.0 ↗。全体を縮小し、WebPへ変換。

夜間のカメラ記録:Kumarほか(2025)、Oryx、図1 ↗、CC BY 4.0 ↗。全4場面を掲載し、WebPへ変換。

雪男・足跡を調べる場面・実験室:AI生成による想像のイメージ。実物・実際の研究を写した資料ではありません。9点の内訳と調査の流れ:本文資料をもとに作成。