01|姿が見えなくても、跡は残る
雪に残った足跡。
その先に、だれがいた?

1951年、登山家のエリック・シプトンたちは、ヒマラヤの雪の上に不思議な足跡を見つけました。シプトンは、登山用の道具や靴をそばに置いて写真に残しました。
足跡が写真に残ったことと、それを雪男がつけたことは、別の話です。写真には、歩いた主の姿までは写っていません。同行者の記録と実際の写真を見る(PDF) ↗
姿を確かめられないなら、別の手がかりはあるでしょうか。「イエティのもの」として保存されてきた毛などに、研究者が目を向けました。
02|山の話を、実物から確かめる
小さな毛にも、
持ち主の手がかりがある。

生き物の体には、体を作るための情報を持つDNAがあります。毛などから取り出したDNAを、どの動物のものか分かっているDNAと比べると、その資料の由来を調べられます。
- 資料を集める毛や皮など、残された実物
- DNAを調べる体の中にある情報を読む
- 動物と比べるどの動物に当てはまるか
2017年、バッファロー大学のシャーロット・リンドクヴィストらは、博物館や個人の収集品から、イエティ由来とされた9点の資料を調べました。毛だけでなく、骨や歯、皮なども含まれていました。その結果はどうだったのでしょう。
03|名前よりも、資料の中身を見る
9点のうち、8点はクマ。
残る1点はイヌだった。
「イエティのもの」と呼ばれていても、DNAが示したのは、すでに知られている動物でした。調べた9点から、未知の雪男のDNAが見つかったわけではありません。
これは大きな手がかりです。けれども、分かったのは調べた資料の正体です。1951年の足跡や、すべての目撃談の主まで、この結果だけで決めることはできません。
では、なぜ手がかりがクマにつながるのでしょう。雪男の話が語られる山には、実際にクマが暮らしているのです。
04|伝説から、生きている山へ
その山には、
本物のクマが暮らしている。

研究者は、地元のクマが雪男の伝承の背景に関わっている可能性が高いと考えています。ただし、長く語られてきた話のすべてを、一種類のクマに置き換えられるわけではありません。
調査は、クマ自身の歴史にもつながりました。DNAを比べると、ヒマラヤヒグマの祖先は、ほかのヒグマの仲間から早くに枝分かれしたと考えられます。山に隔てられて暮らすクマたちにも、長い歴史があったのです。
伝説の手がかりを追ううちに、本物の動物についても新しく分かることがありました。いま、山の観察はどこまで進んでいるのでしょう。
05|残る謎を、次の記録へ
夜のカメラがとらえた、
山を歩くクマ。

インド北部のラダックでは、見慣れない大きな動物の話を受け、観察用のカメラが置かれました。8台のうち3台が1頭のクマを記録。研究者は、毛色や首のまわりの白い模様などから、チベットヒグマと判断しました。
この記録も、昔の雪男の目撃を全部解決したものではありません。けれど、山のどこに、どんな動物が暮らすのかを確かめる記録は、今も増えています。
雪男の手がかりを調べたら、クマにつながった。まだ主の分からない足跡や話も残っています。想像の姿を楽しみながら、確かめられた実物と記録を追う。その先には、伝説の山で生きる動物たちの、別のふしぎが待っています。
REFERENCE DESK
参考資料・関連リンク
伝承、資料のDNA、実際の動物の観測を分けて確認しました。資料の最終確認:2026年10月11日。
ヒマラヤヒグマの写真:Niazulkhan / Wikimedia Commons ↗、CC BY 4.0 ↗。全体を縮小し、WebPへ変換。
夜間のカメラ記録:Kumarほか(2025)、Oryx、図1 ↗、CC BY 4.0 ↗。全4場面を掲載し、WebPへ変換。
雪男・足跡を調べる場面・実験室:AI生成による想像のイメージ。実物・実際の研究を写した資料ではありません。9点の内訳と調査の流れ:本文資料をもとに作成。
