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与那国島の海底にある段状の岩の壁と、その前を泳ぐ潜水者。2019年の実写真
海底の段状の岩と潜水者。2019年の実写真です。
記録番号JPN–GEO–003
不思議な場所・現象FILE 047

与那国島の海底遺跡Yonaguni Underwater Monument

海底の階段は、
だれが造った?

海に潜ると、岩の壁に大きな段差が並んでいます。沖縄の与那国島よなぐにじまで「海底遺跡」と呼ばれる場所です。昔の人が造ったのでしょうか。それとも、岩と波が生んだ形なのでしょうか。実際の写真から、手がかりを追ってみましょう。

▰ カテゴリ不思議な場所・現象◎ 地域沖縄県・与那国島の南側◆ キーワード与那国島 / 海底遺跡 / 海底地形 / 自然形成 / 人工説▥ こわさこわさは低め

01|階段に見える岩

この角を見て、
何を思い浮かべますか。

平たい岩の面と折れ曲がる角が見える海底地形の近景
平らな面と、角をつくる縁。2013年に撮影された実物の岩です。形が見えることと、人が造ったと分かることは別です。

広い床、階段、石の壁。写真を見ると、そんな建物の一部を思い浮かべるかもしれません。

この地形は1986年、ダイビングの場所を探していた新嵩あらたけ喜八郎さんが見つけました。島の南側の海にあり、「海底遺跡」と呼ばれて知られるようになりました。

遺跡とは、昔の人が暮らしたり、何かに使ったりした場所や物が残るところです。ただ、この呼び名だけで、目の前の岩が人の造った建物だと確認されたわけではありません。

まっすぐな角は、人が削った証拠になるのでしょうか。次は、岩そのもののつくりを見てみます。

02|自然にできる直線

岩は、でたらめな形に
割れるとは限りません。

01 層と割れ目がある岩横の層と縦の割れ目が、
岩が分かれる境目になります。
02 一部が外れて、段差へ波などで岩がはがれると、
平面や角が残ることがあります。
砂岩の層と割れ目、岩がはがれる仕組みを単純化した図です。現地の実測図ではなく、実際の形・時間・形成順序をそのまま示したものではありません。

この付近にあるのは、昔の砂などが固まった砂岩さがんです。砂が積もった層に加え、岩には自然にできた割れ目があります。

層や割れ目に沿って一部がはがれると、まっすぐな縁や平らな面が残ります。波や風化によって形が変わり、階段のように見えることもあるのです。自然の岩は、丸いものばかりではありません。

琉球大学の地形解説や、潜水して調べた地質学者のロバート・ショックは、岩のこうした性質から自然にできる形だと説明しています。2020年の研究でも、島の南岸には似た地形が見られると報告されています。

島の岩と地形を調べた研究を見る ↗

自然にも角や段差ができるなら、「階段に見える」だけでは答えを決められません。では、人が手を加えたという説は、どう確かめればよいのでしょうか。

03|人の手を確かめる

形の印象から、
人が使った証拠へ。

階段に見える岩の「形」まず見つかる手がかり
加工の跡道具で削ったと
確かめられるか
使った跡人の活動と
結びつく物があるか
いつのものか形と年代が
同じ出来事を示すか
人工物かを考えるときに確かめたい、別々の手がかり。図の記録や跡は検証の観点を示すもので、現地の出土品や確認された加工痕を描いたものではありません。

海底を調査した木村政昭さんは、自然の岩を昔の人が加工したのではないかと考えました。岩を積み上げる建物だけでなく、一つの岩を削って使う可能性にも目を向けた説です。

ただし、その説が出されたことと、加工が確認されたことは違います。人の道具で削った跡なのか、自然にできた傷なのか。周りの物や年代は、その使い方と結びつくのか。形以外の手がかりも合わせて調べる必要があります。

ショックも、一部を人が利用したり、加工したりした可能性には触れています。しかし、地形の大部分は自然にできたというのが本人の結論です。可能性への言及を、人工都市が見つかった証拠にはできません。

また、岩自体がとても古いからといって、建物もそのころに造られたとは言えません。岩ができた時期と、人がもし使った時期は、別に確かめるものです。

04|岩が語る現在地

海底の外にも、
手がかりは続いています。

海底地形の近くの海岸。層の重なる崖と、水面から出ている平たい岩が見える
同じ場所を水面上から見た海岸。2013年の実写真です。海底の地形は、写真右側の水中にあります。

地形そのものは実在し、その直線や段差には、岩の層・割れ目と侵食しんしょくによる説明があります。現在、沈んだ都市が発見されたという確かな証拠は確認できていません。

一方、各部分がいつ、どのように今の形になったのかを詳しくたどる調査には、まだ余地があります。一部に人の手が加わったかも、可能性を挙げるだけでは決められません。

「まだ調べることがある」は、「きっと古代の都市だ」という意味ではないのです。岩を見つめ、陸の地形と比べ、根拠を増やしていくことで、言えることの範囲が変わります。

最初は階段に見えた岩。その角を見たあとで、波や岩の割れ目にも目を向けると、海底の景色は少し違って見えるかもしれません。

REFERENCE DESK

参考資料・関連リンク

地形の観察、自然形成の説明、人工説を分けて確認しました。資料の最終確認日は2026年10月10日です。

画像クレジット

実写真3枚:Melkov/Wikimedia Commons、CC0 1.0。縮小・WebP圧縮のみで、内容や色調は変更していません。

Hero:Main Terrace(2019年)↗ / 岩の角:At the Yonaguni Monument(2013年)↗ / 海岸:above the Water(2013年)↗

図解は本文資料をもとに作成。岩がはがれる一般的な仕組みと、人工物かを確かめる観点を示し、現地の実測図や出土品を再現したものではありません。AI生成画像は使用していません。