OBSERVATION 01
川の半分が、
岩の穴へ落ちていきます。
場所は、アメリカのミネソタ州にあるジャッジ・C・R・マグニー州立公園です。ブルール川は、硬い火山岩のところで二つに分かれます。東側の水は約15メートル下の水面へ落ち、そのまま川を流れます。西側の水は「デビルズ・ケトル」と呼ばれる大きな穴へ入り、外から見えなくなります。
※AI生成によるイメージQUESTION 02
物が見つからない。
それだけで水の行き先は決まりません。
昔から、穴へ入った木の枝などが下流で見つからないと語られてきました。そこから「湖まで続く地下の道があるのでは」と考えた人もいました。
けれど、物が見つからないことと、水が別の場所へ消えたことは同じではありません。穴の中には強い流れがあり、物が引っかかったり、こわれたりする可能性があります。科学者は、うわさではなく、水そのものが川から減っているかを調べることにしました。
CHECK 03
大きな地下水路を、
岩は作りやすいでしょうか。
水が通る大きな洞窟は、石灰岩のように水でとかされやすい岩でできることがあります。しかし、滝のまわりにあるのは流紋岩という硬い火山岩です。地下深くの岩も、長いトンネルができる条件とは合いません。
遠くへ続く大洞窟
この場所の岩は、巨大な通り道を作りやすい石灰岩ではありません。
近くで川へ戻る
もし下流の水が減っていなければ、水は近くで川へ戻ったと考えられます。
MEASUREMENT 04
穴を見るかわりに、
滝の上と下で水を数えました。
ここで使ったのが「流量」です。流量とは、一秒間に、その場所を通る水の量のこと。川の幅や深さ、水の速さをいくつもの場所で測ると、通り過ぎる水の量を見積もれます。
2016年の秋、ミネソタ州天然資源局の調査員は、滝の上と、数百フィート下流で流量を測りました。
差は約1.6%。調査担当者は、測定器の誤差を考えると二つは同じ範囲だと判断しました。
もし穴の水が川を離れ、遠い湖などへ流れていたなら、下流では大きく水が減るはずです。ところが、測った量はほぼ同じでした。水は消えたのではなく、滝のすぐ下あたりでブルール川へ戻っている——これが測定から最もよく支えられる答えです。
CURRENT STATUS
行き先は分かりました。
通った道は、まだ見えていません。
水は穴へ落ちる
川は二つに分かれ、片方が大きな岩の穴へ入ります。
上流 123/下流 121
測定誤差を考えると、川の水は大きく減っていません。
水は下流へ戻る
穴の水は、近い場所でブルール川に合流すると考えられます。
正確な地下の道
どんな形で、どの一点から戻るのかは直接確かめられていません。
いまの答え
滝に消えた水は、どこへ行った?
水は消えていません。
見えないところを通り、すぐ下流の川へ戻ると考えられます。
穴の中の道を目で追えなくても、入る前と戻った後の水を比べれば、行き先をしぼれます。科学が見つけたのは地下の地図ではなく、「川から水が失われていない」という証拠でした。正確な道筋は、岩と水の下に残る小さな謎です。
REFERENCE DESK
参考資料・関連リンク
現地を管理する公的機関の調査と案内、流量測定の公的解説、写真の原典を紹介します。
Hero写真:August Schwerdfeger「Devil's Kettle - 2015-09-13 - 2.jpg」、CC BY 4.0。Web表示用に縮小して表示しています。
川の分岐Visual:Minnesota DNRの現地説明と調査結果をもとにしたAI生成の概念イメージです。地下の青いぼかしは推定領域であり、実測された経路ではありません。
流量比較図:Minnesota DNRとUSGSの資料をもとにした説明図です。
