FIELD OBSERVATION 01
一つの円ではない。
草原が水玉模様になる。
アフリカ南西部、ナミブ砂漠の東のへり。雨がとても少ない砂地に、短い草がまばらに生えています。空から見ると、直径およそ2〜12メートルの丸い裸地——草がほとんどない場所——が、何度も現れます。
円のふちだけ、背の高い草に囲まれることもあります。ぴったり同じ大きさでも、定規で描いたような並び方でもありません。それでも、でたらめに置いた点より均等に離れて見えます。これが「フェアリーサークル」と呼ばれる模様です。
一つの円ができる理由だけでなく、なぜたくさんの円が間隔を取って並ぶのか。そこまで説明しなければ、この不思議は解けません。
EVIDENCE 02 · TIME
円はずっと、
同じ姿ではない。
円は、昔から地面に残る穴なのでしょうか。研究者ウォルター・チンケルは、同じ地域の2004年と2008年の衛星画像を比べ、さらに地上で確かめました。そこには、新しくできた円も、草が戻りつつある円もありました。
その後のドローン調査でも、変化が写真に残されています。下の右上、左下、右下は、同じ範囲を別の年に写したものです。丸い空白がくっきり残る場所と、草に覆われて境目が薄くなる場所を見比べてください。

チンケルは、円が生まれたり消えたりする割合から、平均寿命を約41年と推定しました。別の確かめ方では約60年。「一つの円は必ず41年残る」という意味ではありません。限られた年の変化から計算した、幅のある見積もりです。
円の一生を調べた研究を確認するEVIDENCE 03 · AFTER RAIN
草が枯れる前に、
雨のあとを追う。
乾いた季節の円を掘っても、草はもうなくなっています。そこで植物と水に注目する研究チームは、2020年から2022年にかけて、雨が降った場所を追いました。円の中でも芽が出る。その草が弱る時期に根を掘れば、何が起きたかの手がかりを探せます。
調べた地点では、草は枯れていても、根には食べられた明確な傷が見つかりませんでした。2024年の追加研究でも、傷のない根と浅い土の乾燥が報告されています。研究チームは、草がシロアリに食べられたのではなく、水不足で枯れたと考えています。
HYPOTHESIS A · PLANTS & WATER
水を吸う草が、
隣の草を育ちにくくする?
草の根は、土の中から水を吸います。周囲に育った草へ水が集まれば、近くの芽には十分な水が届かないかもしれません。すると、草が育つ場所と、草が枯れて空白のまま残る場所が分かれます。植物と水の仮説は、この水の取り合いから模様を説明しようとします。
だれかが並べなくても、同じ働きがあちこちで起これば、全体に模様が生まれる。こうした現象を「自己組織化」と呼びます。草に考える力がある、という意味ではありません。
水分の測定や、条件を変えて模様の生まれ方を計算するモデルは、この説明を支えています。ただし、計算で似た模様を作れることと、現地のすべての円が同じ仕組みでできたと証明することは別です。水が土の中をどう動くかについても、研究者の解釈は分かれています。
雨後の草と土壌水分の研究を確認するHYPOTHESIS B · SAND TERMITES
地下の小さな住人が、
草を取り除く?
ナミブの多くの円では、砂の中に砂シロアリが見つかります。研究者ノルベルト・ユルゲンスらは、シロアリが草を取り除くことで、植物に吸われない水が裸地の下へ残ると考えました。その水が、地下のシロアリや円のふちの草を支える、という説明です。

シロアリ仮説の研究者たちは、分布や地下に残る水を重視し、植物と水の説明に反論しています。一方、植物に注目するチームは、傷のない根と浅い土の乾燥を重視します。
浅い土が乾いていることと、深いところに水が残ることは両立します。けれど、その水分の違いを何が作り、円の誕生にどう関わるのかは、まだ議論中です。円の下にいることと、円を最初に作ったことは、分けて確かめる必要があります。
シロアリ仮説からの反論を読むEVIDENCE 04 · SOIL LIFE
空白の内側は、
土の中も違っていた。
2025年には、土の中の「線虫」を調べた研究が発表されました。線虫は、糸のように細い小さな動物です。研究チームはナミブ砂漠の9地点で、円の中心、ふち、円の外の土を比べました。
円の中心では、線虫の数や、枯れた草などに由来する土の有機物が少なくなっていました。地上の草がない場所は、地下の生物にとっても違う環境なのです。ただし、線虫の違いが見つかったからといって、線虫が円を作ったと分かったわけではありません。
CURRENT STATUS
並ぶ姿は確かめた。
仕組みの議論は続く。
円は生まれ、変わる
円形の裸地が多数並び、新しくできたり、草に覆われたりします。雨後の草、水分、シロアリ、土の生物が調べられています。
草と水の説明
傷のない根や土の乾燥、模様を作る計算は、植物どうしの水の取り合いを支持します。現地への当てはめには反論もあります。
シロアリの説明
多くの円での生息や地下の水との関係が、この説明の根拠です。草が最初に枯れる原因かどうかは、研究者の見方が分かれています。
誕生から消失まで
円ができる瞬間から消えるまで、何がどれだけ働くのか。雨量や場所で変わるのか。両方が関わるとしても、その役割は未確定です。
THE NEXT RAIN
次の雨で、
一つの円を追いかける。
空から見れば静かな水玉模様でも、地面では草が芽を出し、水を吸い、虫が暮らしています。次の雨のあと、一つの円の内と外で根、水、シロアリを同時に追えたら。並んで見える丸い空白が、いつ、何によって生まれるのかを、もう少し絞り込めるかもしれません。
REFERENCE DESK
参考資料・関連リンク
根拠の確認日:2026年10月16日。円の時間変化、雨後の草、二つの仮説、土の生物を区別し、研究者間の反論も案内しています。
Hero:OpenAIの画像生成機能による概念イメージ。実写・特定の観測地点ではありません。
経年写真:Getzinほか(2024)図1、CC BY 4.0。シロアリ写真:Tony Rebelo、CC BY-SA 4.0。いずれも改変なし。各出典・ライセンスは写真直下に記載しています。
