ONLINE ARCHIVE第 一 書 庫
砂漠に広がる大きな鳥の地上絵を想像した俯瞰イラスト
砂漠を見下ろすと、地面の線が鳥の姿になります。AIによるイメージ。実際の図形や地形を正確に再現した画像ではありません。
記録番号PER–ARC–001
歴史の謎FILE 006

ナスカの地上絵Nazca Lines

ナスカの地上絵ちじょうえは、なんのために描かれた?

南アメリカの砂漠に、鳥やサル、長い直線が残っています。地面に作られたこの絵を、古代の人々は何のために使ったのでしょうか。

▰ カテゴリ歴史の謎◎ 地域ペルー南部・ナスカ/パルパ◆ キーワードナスカ / 地上絵 / 考古学▥ こわさこわさは低め

「地上絵」は、地面に作られた絵や線のことです。ナスカでは、動物の姿だけでなく、まっすぐな線や大きな図形も見つかっています。まずは場所と、本物の絵を見てみましょう。

SECTION 01|WHERE ARE THEY?

砂漠に残る、
絵と長い線

ナスカの地上絵があるのは、南アメリカのペルー南部です。ナスカとパルパ周辺の、とても乾燥した台地に、動物や人物、長い直線などが残されています。この一帯は、ユネスコの世界遺産にも登録されています。

南アメリカのペルー

大陸の西側、太平洋に面した国

ペルー南部の砂漠

ナスカ/パルパ周辺

正確な地理データによる位置図ナスカの地上絵は、南アメリカのペルー南部、ナスカとパルパ周辺にあります。地形:Natural Earth(パブリックドメイン)/地点:ナスカ約14.8°S・74.9°W、パルパ約14.5°S・75.2°W。
実際のハチドリの地上絵。くちばしや翼を細い明るい線が描いている航空写真
実物資料|現地航空写真実際のハチドリの地上絵。細い線を追うと、長いくちばしや翼が見えてきます。撮影:Murray Foubister/Wikimedia Commons/CC BY-SA 2.0(トリミングなし・縮小表示)/原資料

100メートル走より長い、鳥の絵もある

100メートル走100 m
2019年発表の鳥の絵100 m 以上
鳥の絵の正確な長さは、この図では示していません。100メートルを超すことが確認されています。下の帯は長さの比較用で、地上絵の形ではありません。資料:山形大学・2019年発表。上のハチドリ写真とは別の地上絵です。

大きさは、絵によって違います。長さ100メートルを超す鳥もあれば、もっと小さな人物や動物もあります。直線や幾何学的な図形には、数キロメートルに及ぶものもあります。

これほど大きな線を、昔の人はどうやって作ったのでしょうか。次は、地面の近くを見てみます。

SECTION 02|GROUND WORK

古代の人々が、
石をよけて作った

砂漠の表面には、暗い色の石が広がっています。その石をよけると、下の明るい地面が見えます。ナスカの線は、この色の違いを使って描かれました。

暗い石をよけ、下の明るい地面を露出させて長い線を作る3段階図
作業前暗い石が表面をおおう
作業中石を両側へよける
作業後明るい線が長く続く
地面の色の違いを使って線を作ります。AIによる原理の再現。描かれた道具や石の厚さは、当時の実物を復元した記録ではありません。

線を少しずつつなげれば、大きな輪郭を作れます。上空に飛ばなければ描けない仕組みではありません。

一度にではなく、長い時代にわたって

紀元前500年ごろ今から約2500年前
紀元500年ごろ今から約1500年前

パラカス文化から、ナスカ文化の時代へ

UNESCOが示す、地域全体の主な制作年代の目安です。一つ一つの絵が同じ時代に描かれたとは限りません。

作ったのは、この地域に暮らした古代の人々です。古い時期のパラカス文化と、その後のナスカ文化に関わる地上絵が残っています。「文化」は、ここでは同じ時代・地域の人々に見られる暮らしや物作りの特徴を指します。

年代は、絵の形を同じ時代の美術と比べるなどして調べられています。ただし、どの絵を誰が何年に作ったかまで、すべて分かっているわけではありません。

線が長く残った大きな理由は、雨が少なく乾燥した環境です。ただし、道路や人の活動、洪水によって傷つく危険は今もあります。

作り方は分かった。でも——なんのために?

SECTION 03|WHY?

誰に、
見せるための絵だった?

作り方が分かっても、目的が分かったことにはなりません。人々が集まって祈る行事や、星や太陽の動きとの関係などが研究されてきました。決まった手順で行う祈りなどの行事を、儀式ぎしきといいます。

ただ、地上絵は大きさも場所も同じではありません。全部を一つの目的で説明できるのでしょうか。

研究上の仮説

儀式や、人が行き来する道

絵と道の位置関係や、近くに残る土器などを比べて、どう使われたかを考えます。用途はまだ解釈を含みます。

SECTION 04|2024 · AI-ASSISTED SURVEY

AIが候補を絞り、
人が砂漠で確かめる

ナスカ台地は広く、すべてを人の目だけで探すには長い時間がかかります。そこで研究者は、航空画像から地上絵らしい場所を探す作業にAIを使いました。

01航空画像広い砂漠を撮影
→
02AI候補可能性の高い場所を抽出
→
03研究者確認画像と候補を精査
→
04現地調査砂漠を歩いて確認
AIが示した候補をもとに現地で小型地上絵を調査する研究者のイラスト
AIが地上絵を確定するのではありません。候補を絞り、最後は研究者が現地で記録・確認します。調査風景をイメージしたAIイラスト
2024303

6か月の現地調査で確認された、人や動物など何が描かれているか分かる地上絵。

AIが候補を探し、研究者が画像を確認し、最後は現地を歩いて確かめる。この組み合わせで、これまで見落とされていた小さな絵も調べやすくなりました。山形大学の2024年研究発表を見る ↗

数が増えると、絵の形や描かれた場所を比べやすくなります。その比較から、どんな違いが見えてきたのでしょうか。

SECTION 05|TWO WAYS OF DRAWING

大きさだけでなく、
形と場所も違っていた

線の輪郭と、面の組み合わせ

石が残る暗い部分石をよけた明るい部分
線タイプAIによる説明用イメージ。石を細い線に沿ってよけた鳥の輪郭。輪郭の内側も外側も暗い石が残る

細い線をつなぎ、輪郭にする。線の内側にも、暗い石が残っています。

面タイプAIによる説明用イメージ。鳥の形の内側を広く石をよけて明るい土を見せ、暗い石を残した目と周囲との違いで形を表す

明るい面と暗い面で、形を表す。石をよける範囲の違いが、絵になります。

技法を比べる説明用イメージ。実際の図柄や大きさは再現していません。※AI生成によるイメージ。現地の写真ではありません。資料:山形大学・2019年、2024年発表。
輪郭を線で作る

大きな線タイプ

  • 野生動物が比較的多い
  • 長い直線や台形と関係する
  • 大勢の人が集まる儀式に使った可能性
明暗の面で表す

小さな面タイプ

  • 人や家畜など、人の暮らしに近い絵が多い
  • 曲がりくねった小道から見える位置に多い
  • 個人や小さな集団が見た可能性

研究では、大きなものを「線タイプ」、石を面としてよけて作る小さなものを「面タイプ」などと分類しています。たくさんの地上絵を比べたことで、大きさだけでなく、描かれたものや置かれた場所にも違いがあると見えてきました。

SECTION 06|WALK THE TRAIL

道のそばの並びが、
意味を考える手がかりに

絵の「並び」から、次の問いへ

鳥がまとまる小道

AIによる説明用イメージ。曲がる小道のそばに鳥の形の地上絵がまとまる

リャマがまとまる小道

AIによる説明用イメージ。別の小道のそばにリャマの形の地上絵がまとまる

見つかった手がかり小道ごとに、似た題材の絵がまとまる。

そこから生まれる考え歩く人へ、何かを伝えていたのかもしれない。

まだ分からないこと一つ一つの絵が伝えた、具体的な内容。

2025年の研究発表をもとにした説明用イメージ。実際の道筋・絵の数・配置を復元した地図ではありません。※AI生成によるイメージ。現地の写真ではありません。

2025年の発表では、新発見は248点。そのうち人や動物などを表す絵は160点でした。調査が行われたのは2023〜2024年です。見つかった絵が増えたことで、小道との関係を詳しく比べられるようになりました。

2024年発表303点新しい人・動物などの地上絵
→
2025年発表248点新発見/うち人・動物など160点
→
確認済み893点人・動物などの地上絵

鳥の絵がまとまる小道、リャマという家畜の絵がまとまる小道など、道ごとに題材が似る傾向が見つかりました。歩きながら見る複数の絵が、情報や物語に関係していた可能性があります。ただし、その意味を読めるようになったわけではありません。新発見の実際の図形と、2025年の発表を見る ↗

空から一枚の巨大絵を見るのではなく、
地上を歩き、順番に絵へ出会っていたのかもしれない。

CURRENT STATUS|いま、どこまで分かっている?

作り方と手がかりは見えた。
絵の意味は、まだ途中。

01
ここまで分かった

人が暗い石をよけて作ったこと。大きな絵と小さな絵では、描かれたものや場所に違いがあること。

↓
02
ここまで見えてきた

全部が同じ目的ではなさそうです。大きな絵は多くの人が関わる儀式、小さな絵は道を歩く人が見る情報や物語と関係した可能性があります。

↓
03
まだ分からない

一つ一つの絵が何を意味したのか。誰が、いつ、どんな場面で見たのか。時代とともに役割がどう変わったのか。

夕方のナスカの砂漠を歩いて調査を続ける研究者たちのイラスト
約2000年前にこの地を歩いた人々と、現在そこで痕跡を確かめる研究者。調査風景をイメージしたAIイラスト

空から眺める鳥の姿だけでなく、道のそばの小さな絵にも目を向けると、古代の人々の暮らしが近づいてきます。

この道を歩いた人は、何を見て、何を受け取ったのでしょうか。石をよけて残した絵の並びを、研究者は今も確かめています。

REFERENCE DESK

参考資料・関連リンク

画像クレジット

航空写真:Murray Foubister、2012年撮影。Wikimedia Commons、CC BY-SA 2.0。縮小表示のみ。原資料と利用条件は写真の下に記載しています。

位置図:Natural Earth(パブリックドメイン)の地理データと、既存の確認済み地点情報。地上絵の詳細な分布図ではありません。

Hero・制作工程・視点・調査・技法の比較・小道と題材のまとまり・結末の画像は、本文資料をもとにしたAIイメージです。人物・道具・図形・地形は、特定の実物や出来事の記録ではありません。長さ・年代の図は、記載した資料をもとに作成した説明図です。