「地上絵」は、地面に作られた絵や線のことです。ナスカでは、動物の姿だけでなく、まっすぐな線や大きな図形も見つかっています。まずは場所と、本物の絵を見てみましょう。
SECTION 01|WHERE ARE THEY?
砂漠に残る、
絵と長い線
ナスカの地上絵があるのは、南アメリカのペルー南部です。ナスカとパルパ周辺の、とても乾燥した台地に、動物や人物、長い直線などが残されています。この一帯は、ユネスコの世界遺産にも登録されています。
南アメリカのペルー
大陸の西側、太平洋に面した国
ペルー南部の砂漠
ナスカ/パルパ周辺

100メートル走より長い、鳥の絵もある
大きさは、絵によって違います。長さ100メートルを超す鳥もあれば、もっと小さな人物や動物もあります。直線や幾何学的な図形には、数キロメートルに及ぶものもあります。
これほど大きな線を、昔の人はどうやって作ったのでしょうか。次は、地面の近くを見てみます。
SECTION 02|GROUND WORK
古代の人々が、
石をよけて作った
砂漠の表面には、暗い色の石が広がっています。その石をよけると、下の明るい地面が見えます。ナスカの線は、この色の違いを使って描かれました。

線を少しずつつなげれば、大きな輪郭を作れます。上空に飛ばなければ描けない仕組みではありません。
一度にではなく、長い時代にわたって
パラカス文化から、ナスカ文化の時代へ
作ったのは、この地域に暮らした古代の人々です。古い時期のパラカス文化と、その後のナスカ文化に関わる地上絵が残っています。「文化」は、ここでは同じ時代・地域の人々に見られる暮らしや物作りの特徴を指します。
年代は、絵の形を同じ時代の美術と比べるなどして調べられています。ただし、どの絵を誰が何年に作ったかまで、すべて分かっているわけではありません。
線が長く残った大きな理由は、雨が少なく乾燥した環境です。ただし、道路や人の活動、洪水によって傷つく危険は今もあります。
SECTION 03|WHY?
誰に、
見せるための絵だった?
作り方が分かっても、目的が分かったことにはなりません。人々が集まって祈る行事や、星や太陽の動きとの関係などが研究されてきました。決まった手順で行う祈りなどの行事を、儀式といいます。
ただ、地上絵は大きさも場所も同じではありません。全部を一つの目的で説明できるのでしょうか。
儀式や、人が行き来する道
絵と道の位置関係や、近くに残る土器などを比べて、どう使われたかを考えます。用途はまだ解釈を含みます。
宇宙人へのメッセージ
「空から見えるほど大きい」という驚きから広まった物語。制作に宇宙人が関わった考古学的証拠は確認されていません。
SECTION 04|2024 · AI-ASSISTED SURVEY
AIが候補を絞り、
人が砂漠で確かめる
ナスカ台地は広く、すべてを人の目だけで探すには長い時間がかかります。そこで研究者は、航空画像から地上絵らしい場所を探す作業にAIを使いました。

6か月の現地調査で確認された、人や動物など何が描かれているか分かる地上絵。
AIが候補を探し、研究者が画像を確認し、最後は現地を歩いて確かめる。この組み合わせで、これまで見落とされていた小さな絵も調べやすくなりました。山形大学の2024年研究発表を見る ↗
数が増えると、絵の形や描かれた場所を比べやすくなります。その比較から、どんな違いが見えてきたのでしょうか。
SECTION 05|TWO WAYS OF DRAWING
大きさだけでなく、
形と場所も違っていた
線の輪郭と、面の組み合わせ

細い線をつなぎ、輪郭にする。線の内側にも、暗い石が残っています。

明るい面と暗い面で、形を表す。石をよける範囲の違いが、絵になります。
大きな線タイプ
- 野生動物が比較的多い
- 長い直線や台形と関係する
- 大勢の人が集まる儀式に使った可能性
小さな面タイプ
- 人や家畜など、人の暮らしに近い絵が多い
- 曲がりくねった小道から見える位置に多い
- 個人や小さな集団が見た可能性
研究では、大きなものを「線タイプ」、石を面としてよけて作る小さなものを「面タイプ」などと分類しています。たくさんの地上絵を比べたことで、大きさだけでなく、描かれたものや置かれた場所にも違いがあると見えてきました。
SECTION 06|WALK THE TRAIL
道のそばの並びが、
意味を考える手がかりに
絵の「並び」から、次の問いへ
鳥がまとまる小道

リャマがまとまる小道

見つかった手がかり小道ごとに、似た題材の絵がまとまる。
そこから生まれる考え歩く人へ、何かを伝えていたのかもしれない。
まだ分からないこと一つ一つの絵が伝えた、具体的な内容。
2025年の発表では、新発見は248点。そのうち人や動物などを表す絵は160点でした。調査が行われたのは2023〜2024年です。見つかった絵が増えたことで、小道との関係を詳しく比べられるようになりました。
鳥の絵がまとまる小道、リャマという家畜の絵がまとまる小道など、道ごとに題材が似る傾向が見つかりました。歩きながら見る複数の絵が、情報や物語に関係していた可能性があります。ただし、その意味を読めるようになったわけではありません。新発見の実際の図形と、2025年の発表を見る ↗
空から一枚の巨大絵を見るのではなく、
地上を歩き、順番に絵へ出会っていたのかもしれない。
CURRENT STATUS|いま、どこまで分かっている?
作り方と手がかりは見えた。
絵の意味は、まだ途中。
人が暗い石をよけて作ったこと。大きな絵と小さな絵では、描かれたものや場所に違いがあること。
全部が同じ目的ではなさそうです。大きな絵は多くの人が関わる儀式、小さな絵は道を歩く人が見る情報や物語と関係した可能性があります。
一つ一つの絵が何を意味したのか。誰が、いつ、どんな場面で見たのか。時代とともに役割がどう変わったのか。

空から眺める鳥の姿だけでなく、道のそばの小さな絵にも目を向けると、古代の人々の暮らしが近づいてきます。
この道を歩いた人は、何を見て、何を受け取ったのでしょうか。石をよけて残した絵の並びを、研究者は今も確かめています。
REFERENCE DESK
参考資料・関連リンク
航空写真:Murray Foubister、2012年撮影。Wikimedia Commons、CC BY-SA 2.0。縮小表示のみ。原資料と利用条件は写真の下に記載しています。
位置図:Natural Earth(パブリックドメイン)の地理データと、既存の確認済み地点情報。地上絵の詳細な分布図ではありません。
Hero・制作工程・視点・調査・技法の比較・小道と題材のまとまり・結末の画像は、本文資料をもとにしたAIイメージです。人物・道具・図形・地形は、特定の実物や出来事の記録ではありません。長さ・年代の図は、記載した資料をもとに作成した説明図です。
