ONLINE ARCHIVE第 一 書 庫
船からネス湖の水面を見つめる人々を描いた想像の場面。水面の影はネッシーの実在を示す証拠ではない
広い湖で、見えたものの正体を探す。※AI生成によるイメージ
記録番号GBR–UMA–001
未確認生物FILE 003

ネッシーNessie / Loch Ness Monster

ネッシーは、
本当にいる?

湖の水面に、長い首や大きな背中のようなものが見えた。イギリスのスコットランドにあるネス湖で、そんな話から広まったのが「ネッシー」です。写真と湖の調査から、どこまで正体を確かめられるのでしょうか。

▰ カテゴリ未確認生物◎ 地域英国・スコットランド◆ キーワードネッシー / ネス湖 / 未確認生物▥ こわさ▲ ちょっとこわい

01|霧きりの湖へ

湖で、何かが見えた。

ネス湖はスコットランド北部にある、長く細い湖です。海のように塩分えんぶんの多い水ではなく、川や雨から集まった淡水たんすいをたたえています。深いところは、水面から湖底こていまで約230メートルあります。

1930年代のネス湖畔で水面を見つめる人々と、新聞やカメラを描いた想像の場面
1933年ごろ、湖で大きな生き物を見たという話が新聞で伝えられました。「ネッシー」の名は、世界へ広まりました。※AI生成によるイメージ

湖の水は暗く、水中を遠くまで見通せません。遠くの波や影を一瞬見ただけでは、大きさや形を確かめるのも難しい場所です。

見たという話はあるけれど、正体が確認されていない生き物を「未確認生物みかくにんせいぶつ」と呼びます。では、姿が写真に写っていたら、正体は分かるのでしょうか。

02|一枚の写真

長い首に、見えるけれど。

1934年、水面から細い首のようなものが出た写真が新聞に載りました。撮影者として名前が出たのが手術をする医師だったため、「外科医げかいの写真」と呼ばれています。

1934年に新聞で広まった外科医の写真。水面から首のようなものが出ているが、後に模型による偽造と説明された写真
当時広まった写真です。長い首に見える形は写っていますが、この写真を生き物の証拠しょうことしては扱えません。写真の出典・利用条件 ↗

長いあいだ、写真はネッシーの姿を想像するもとになりました。ところが1994年、関係者の証言しょうげんをもとに、小さな潜水艇せんすいていに首の模型もけいを付けて撮ったという説明が広まりました。模型もけいは、ものの形を小さく作ったものです。

小型の潜水艇に首の模型を付け、水面を撮影する仕掛けを想像して描いたイラスト
小さな模型もけいでも、撮り方によっては大きな生き物のように見せられます。※AI生成によるイメージ

写真の経緯と模型もけいの説明を見る(英語)↗

ここで分かるのは、この写真を信頼できる証拠しょうこにはできないということ。ほかの目撃もくげきまで、全部同じ仕掛けだったと分かったわけではありません。水面の写真だけでなく、水中を調べる方法も見てみましょう。

03|湖を音で探す

見えない水中へ、
音を送る。

暗い水中を探すために使われたのが「ソナー」です。音を送り、ものに当たって戻ってくる音を調べます。戻るまでの時間から、ものまでの距離を考えられます。

ネス湖で横一列に進み、ソナーで水中を調べる船団を描いた想像の場面
1987年の「オペレーション・ディープスキャン」。20隻せきの船に音を使う機器を載せ、広い範囲を調べました。写真の模型もけいの話が広まるより前の調査です。※AI生成によるイメージ

調査者の記録と、実際の船団の写真を見る(英語)↗

あとから同じ場所を調べると、動かないものから返っていた反応が多くありました。一方、再び探したときには消えていた反応も三つあり、何だったのかは特定できませんでした。

では、人々が思い描いた長い首の生き物は、何だったのでしょう。その姿によく似た、昔の動物が候補に挙げられてきました。

04|首長竜くびながりゅうなのか

昔の動物が、
生き残っている?

長い首のイメージから人気になったのが、「首長竜くびながりゅうの生き残り」という説です。首長竜くびながりゅうは、恐竜と同じ時代に生きた爬虫類はちゅうるいの仲間。恐竜とは別のグループで、四つのひれを使って泳ぎました。

化石から考えた首長竜と、長い首を持つ伝説のネッシー像を左右に分けて描いた比較イラスト
左は昔の首長竜くびながりゅう、右は伝説から想像された姿。似て見えても、同じ生き物だと確認されたわけではありません。※AI生成によるイメージ

化石からは、首長竜くびながりゅうは約6600万年前に絶滅ぜつめつしたと考えられています。一方、2022年にはモロッコの古い川で見つかった化石から、淡水たんすいにも暮らした種類がいた可能性が示されました。

川の化石から分かったことを見る(英語)↗

ただし、昔の川に暮らせたことは、今のネス湖で生き残っている証拠しょうこではありません。生きた個体は確認されていないのです。姿が見つからなくても、湖の水に生き物の痕跡こんせきは残らないでしょうか。

05|水からDNAを探す

姿が見えなくても、
水に手がかりが残る。

生き物は、皮ふのかけらや粘液ねんえき、ふんなどを水中に残します。それらに含まれるDNAは、生き物の体にある情報です。種類ごとに異なる情報を調べることで、何がいたかを考える手がかりになります。

ネス湖の水をボトルに採り、DNAを調べる準備をする人を描いた想像の場面
2018年、オタゴ大学を中心とするチームが湖の各所で水を採り、約250の試料しりょうを調べました。結果の発表は2019年です。※AI生成によるイメージ

水から、生き物の手がかりを調べる

  1. 1生き物が
    痕跡こんせきを残す
  2. 2湖の各所で
    水を採る
  3. 3水にある
    DNAを集める
  4. 4知られている生き物の
    DNAと比べる
水などの環境かんきょうに残ったDNAを調べるため、「環境かんきょうDNA」と呼びます。

この調査では、首長竜くびながりゅう説を支える手がかりは得られず、ナマズ、チョウザメ、サメのDNAも見つかりませんでした。一方、ウナギのDNAは、ほぼすべての採水地点で見つかりました。

大学が発表した調査結果を見る(英語)↗

たくさん見つかったウナギのDNA。では、それは巨大きょだいなウナギの証拠しょうこなのでしょうか。

06|ウナギの大きさ

ウナギはいる。
でも、大きさは?

ウナギと、水中の大きさ不明の影を分けて描いた仮説のイラスト。巨大な個体を確認した画像ではない
ウナギは実際にネス湖にいます。遠くの影は想像で、大きさを比べるための図ではありません。※AI生成によるイメージ

DNAで分かったのは、ウナギの手がかりが広くあること。ウナギ一匹の体長たいちょうは、この調査では分かりません。研究者も、巨大きょだいなウナギを発見したとは発表していません。

そこで別の手がかりになるのが、捕まえたウナギの記録です。2023年の研究は、過去のデータから大きさを推定すいていし、6メートルものウナギはとても考えにくいとしました。

ウナギの大きさを調べた論文を見る(英語)↗

この研究も、湖のウナギを全部捕まえたわけではありません。「ウナギのDNAがある」と分かっても、体の大きさは別の手がかりで確かめる必要があるのです。写真、音、水の情報。それぞれの手がかりを合わせると、いま何を答えられるでしょう。

CURRENT STATUS|いま分かっていること

巨大きょだいな生き物は、
まだ確認されていない。

いまのところ、ネス湖でネッシーと呼ばれる巨大きょだいな未知みちの生き物が暮らしているという、確かな証拠しょうこはありません。有名写真も、ソナーの反応も、ウナギのDNAも、その存在を確認したものではありません。

一方、すべての目撃もくげきの正体が分かったわけでもありません。船が残した波、鳥や魚、流木りゅうぼくなど、別々のものを見た可能性があります。何十年もの目撃もくげきを、全部一つの原因で説明する必要はないのです。

夕暮れのネス湖と水面の波紋を描いた静かな想像の場面
次に水面の影を見つけたら、何を残せば正体に近づけるでしょう。写真の形だけでなく、距離や大きさ、水の中の手がかりも見てみたくなります。※AI生成によるイメージ

REFERENCE DESK

参考資料・関連リンク

写真の経緯、調査者の記録、大学・博物館の解説と論文を参考にしています。調査で分かったことと、まだ確かめられていないことを分けて読める資料です。

画像クレジット

1934年「外科医の写真」:新聞掲載写真のスキャン。Wikimedia Commonsの記載作者はM. A. Wetherell。Public Domain(著作権による利用制限のない資料)。出典と利用条件 ↗。全体を縮小し、WebP形式へ変換しています。被写体の補完・内容の変更はしていません。

AI生成画像8点は、いずれも説明のためのイメージで、実写・実資料ではありません。Evidenceとの境界は本文と各Captionで示しています。

環境DNAの手順図:オタゴ大学の説明をもとに作成。DNAで種類の手がかりを調べる方法を示し、個体の大きさを測る図ではありません。