ONLINE ARCHIVE第 一 書 庫
星空の下で電波を待つ望遠鏡の概念イラスト
AI生成のイメージ。Big Earの正確な復元ではありません。
記録番号USA–SPC–001
不思議な場所・現象FILE 013

Wow!シグナルWOW! SIGNAL · 1977

72秒の電波は、
どこから来た?

夜空を調べる望遠鏡が、一度だけ強い電波を捉えました。
紙に残った6文字は、遠い宇宙からの言葉なのでしょうか。

▰ カテゴリ不思議な場所・現象◎ 地域アメリカ・オハイオ州で観測◆ キーワード#Wow!シグナル #宇宙 #電波望遠鏡▥ こわさこわさは低め

01|赤い書き込み

「Wow!」と書いたのは、
記録を見た人でした。

宇宙からは、目に見える光だけでなく、電波も届きます。それを集めて調べるのが電波望遠鏡です。人の声を聞く道具ではなく、遠くの天体が出す電波の強さや性質を測ります。

1977年8月15日、アメリカ・オハイオ州のBig Ear(ビッグ・イヤー)という電波望遠鏡が、強い電波を記録しました。後で印刷された紙を調べたジェリー・エーマンさんは、目立つ6文字を赤いペンで囲み、横に「Wow!」と書き込みました。英語で驚いたときに使う言葉です。

印刷された文字の列に、赤ペンで6EQUJ5を囲み、Wow!と書いた当時の観測記録の複製
この赤い書き込みが、名前の由来。1977年の記録用紙のカラー複製を後年にスキャンしたもの。Big Ear Radio Observatory / NAAPO、Wikimedia Commons、Public Domain。大きな画像を見る ↗

この記録は、Wow!ワオシグナルと呼ばれるようになりました。では、囲まれた「6EQUJ5」は何を伝えているのでしょう。

02|6文字を読む

暗号のような文字が、
一つの山になりました。

実は、この6文字は宇宙から届いた文章ではありません。電波の強さを、コンピューターが一文字ずつに置き換えた記録です。10をA、11をB……と書けば、強い電波の値も紙の一マスに収まります。

約12秒ごとに、6回の記録6EQUJ5
1回目
66
2回目
E14
3回目
Q26
4回目
U30
5回目
J19
6回目
55
弱い → 強い → また弱い。

下の数字は強さの指標の整数部分。普段の電波の強さを差し引き、いつものゆらぎを単位に表しています。電波全体が「背景の30倍」だったという意味ではありません。Big Earの数値説明をもとに作成。

約12秒間隔で6回、合計約72秒。強さは上がって、また下がっています。ここで大切なのは、72秒は記録に捉えられた長さだということ。電波を出したものが、ちょうど72秒で止まったと分かったわけではありません。

Big Earは、一つの星を追いかけて向きを変えるのではなく、地球が回ることで空の違う部分を順に調べていました。同じ強さの電波を出す天体でも、受信範囲の端では弱く、中央では強く、通り過ぎるとまた弱く見えます。記録の山は、その変化によく合っていました。

天体から来たような強弱があり、気になる周波数でもあった。それなら、同じ方向をもう一度調べればよさそうです。ところが、記録には困った点がありました。

03|片方にしか残らない

もう一度が、
見つかりません。

Big Earには、空の少し違う場所から電波を受ける二つの範囲がありました。天体が同じ電波を出し続けていれば、地球の自転で一方の範囲を通った約3分後、もう一方でも捉えられるはずです。

先に通る範囲約3分後の範囲
同じ電波が
続いていれば
検出検出
今回の可能性A検出記録なし
今回の可能性B記録なし検出
片方だけ。どちらで捉えたかも不明です。

AかBのどちらだったかは、記録から決められません。二つの範囲で検出できるはずの電波が、片方にしか残りませんでした。装置の形や空の縮尺を表す図ではありません。

つまり、「宇宙の一点から来たように見える」特徴がある一方で、いつも同じように出ている電波としては説明しにくかったのです。どちらの範囲で検出したか決められないため、空のどの方向だったかにも二通りの候補が残りました。

その後、Big Earや別の電波望遠鏡で探しても、同じ信号は確認されていません。2022年には、発信源かもしれないと提案された一つの星を、二つの望遠鏡で調べましたが、地球外の技術による電波の候補は見つかりませんでした。ただし、その星の観測だけで、ほかの方向や時刻まで否定することはできません。

2022年の観測と、その結果を見る

一度だけの信号から、発信源を突き止めるのは難しいことです。それでも、調べる手がかりは空だけにあるわけではありません。昔の観測データを、今の方法で読み直す研究も進んでいます。

04|新しい説明候補

宇宙のガスが、
電波を強めたのかも。

宇宙には、水素のガスが薄く広がった雲があります。2024年、アレシボ望遠鏡の保存データを調べた研究チームは、水素雲から、Wow!シグナルに似た狭い周波数の弱い電波を見つけたと報告しました。

遠くの星の強い放射が、薄く広がる水素雲へ届く様子を想像した宇宙のイメージ
強い放射が、水素の雲に届いたら?仮説を想像するための画像(AI生成)。雲の色・形・星との位置関係は想像です。実際の発信源を写したものでも、目に見えない電波を撮影したものでもありません。

チームが考えたのは、強い磁力を持つ星などからの激しい放射が水素雲に作用し、雲が短い間だけ強い電波を出した、という可能性です。似た弱い電波の発見をもとに、なぜ特別に強くなったかを説明する仕組みを提案したのです。Wow!シグナルそのものを再び捉えたわけではありません。

2025年には、Big Earに残る古い観測資料を使い、信号が来た方向、強さ、周波数を見直した論文原稿も公開されました。研究チームは自然現象による説明を支持しています。2026年9月更新の公式ページでも推定値を整理していますが、それで発信源と仕組みが確定したとはしていません。

研究チームの最新の整理を見る

自然現象の説明が進んだことと、正体が決まったことは別です。人間が出した電波だった可能性も、地球外の技術だった可能性も、特定の発信源が確かめられたわけではありません。

05|いま分かっていること

強さは分かった。
正体は、まだ不明。

確かめられたこと

強い電波を記録した

6EQUJ5は約72秒の強弱を示します。文章を解読したものではありません。

説明の候補

宇宙の自然現象など

水素雲が一時的に電波を強めた仮説があります。原因を確定した証拠とは区別します。

残っている問い

何が、どこで出した?

発信源と仕組みは特定されていません。地球外文明からの通信という証明もありません。

紙の上の6文字を強さの図にすると、そこには一つの山が現れました。でも、その山の向こうに何があったのかは、まだ見えていません。別の望遠鏡で同じような信号を捉えること、残された観測資料を調べ直すこと。その両方から、この記録の続きを探しています。

REFERENCE DESK

参考資料・関連リンク

根拠の確認日:2026年10月15日。当時の記録、追跡観測、研究チームが提案する仮説を区別して読める資料です。

当時の観測者の解説Jerry R. Ehman|Explanation of 6EQUJ5www.bigear.org6文字の値、約12秒間隔、強さの計算方法を確認。観測装置と記録Jerry R. Ehman|Wow! Signal — 30th Anniversary Reportwww.bigear.org二つの受信範囲、検出した側の不明点、観測時間と実際の持続時間の違い。実資料と利用条件Wikimedia Commons|Wow signal.jpgcommons.wikimedia.orgBig Ear / NAAPOの記録用紙の複製スキャン。Public Domain(PD-ineligible)の表示を確認。追跡観測Gray & Marvel|A VLA Search for the Ohio State Wowui.adsabs.harvard.edu1995〜1996年に行われたVLAの探索結果。追跡観測Breakthrough Listen|Search for the WOW! Signalseti.berkeley.edu2022年、候補の星を二つの望遠鏡で調べた観測。元の空域全体を否定する結果ではない。自然起源の仮説Méndez ほか|Arecibo Wow! Iarxiv.org水素雲が一時的に強い電波を出す仕組みを提案。論文があることと原因確定は別。古い記録の再解析Méndez ほか|Arecibo Wow! IIarxiv.org2025年に公開された論文原稿。発信方向や強さを再評価し、自然起源を支持する著者の解釈を提示。研究チームの現在地PHL / UPR Arecibo|Properties of the Wow Signalphl.upr.edu2026年9月更新。推定値は今後変わり得ること、再解析でも正体は未確定であることを明記。研究チームの公式解説PHL / UPR Arecibo|Arecibo Wow!phl.upr.edu自然現象の仮説、研究計画、論文の状況を確認。
画像クレジット

記録用紙:Big Ear Radio Observatory / NAAPO、Wikimedia Commons「Wow signal.jpg」、Public Domain(PD-ineligible)。原紙のカラー複製のスキャンです。

Heroと水素雲はAI生成のイメージ。実写ではありません。強さの図と二つの受信範囲の比較は、Jerry R. Ehmanの公開解説をもとに作成しています。